平成8年末、諸般の事情により、袂を分かつ関係になっていた父。
「バカ親父」・「クソ親父」・・・恨みと憎しみしか、心には残っていなかった。
しかし昨年末、自分でも理由が解らない心境の変化があり、和解し関係の修復が出来た。

自分も15年で成長した(変わった?)と思うが、父も変わっていた。

生まれて、袂を分かつまで約30年・・・
父から、感謝や謝罪の言葉など聞いたことが無かった。
しかし関係を修復出来てから、父の口から「ありがとう」や「すまなかった」の言葉を聞く事が出来た。
自分もそれなりの苦労をしたが、父にも様々な事があったのだろう。
それからは、頻繁に連絡を取り合う、「普通の親子」に戻れた。

今月の14日に誕生日を向かえ、数えで77歳になる父。77歳と言えば喜寿。
還暦も古希も祝う事をしなかった親不孝を詫びる為にも、今回は祝ってあげなければ!

先週にメインのプレゼントを買ってあったので、あとは手土産・・・
前日から、何を持って行けば喜んで貰えるか考える。

そして当日・・・もの凄い雨音で目を覚ました。
オイオイ、マジかよぉ~!外を見ると、文字通り「バケツをひっくり返したような雨」
釣りで和歌山に行く時なら、ふて寝をしてしまうような雨。
でも、今回は何が有ろうと行かねばならない。
ゆっくりと身支度をして、往路の行程を考える。

少し予定より早いが出発。

先ずは、住吉の「ねぼけ堂」でお菓子を買う。
糖尿病を患っている父だが、自分で食べるのがNGと言う最悪の場合は、
マンションの管理組合の人にあげるという選択も出来るだろう。

開店時間が分からなかったので、少々不安だったが9時半に到着。
開店時間が9時だったので、問題無くお土産を買う事が出来た。

次の立ち寄り先は、堺の宿院にある蕎麦屋の「ちく満」。
幼い頃から父に連れられて、よく、ここの蕎麦を食べた。
恐らく、生まれて初めて口にした蕎麦は、ここの蕎麦だったろう。
メニューには、蕎麦の量だけしか書いていない。「1斤」とか、「1斤半」とか・・・
それもそのはず、ここで出される蕎麦は「せいろ蕎麦」だけ。
メニューに「せいろ蕎麦」などと書く必要も無いと言う事だろう。

店に着いたのは10時、しかし開店は10時半・・・ちょっと早過ぎた。
どうする?和歌山の周参見まで行くのに30分のロスはもったいない気もする。
でも長い間、父は「ちく満」の蕎麦を食べていないだろう。

「どうする?どうする?」・・・浄瑠璃の合いの手の様に考える。
「スルー!、仕方ない、堺ICに向かおう。」
そう決断し、車を堺IC方面へ・・・何故か?そう何故か?
高架道路に向かう筈が下道へ・・・この時点で決断が変わる。

せっかく祝いに行くんだ。明日も休み。天気も悪いから帰りの渋滞も少ないだろう。
30分遅れる事なんて問題じゃない、30分遅く帰れば良い事なんだから。
そう思い直して、もう一度「ちく満」に向かう。

「ちく満」の駐車場前で開店時間を待つ・・・待つ事、約20分

時計が10時25分を指す。
店員さんが駐車場の門を開けると同時に車を停めて、店内へ

開店まで、あと5分の店内は、まだ開店準備が続いている。
普段なら入店時に「いらっしゃいませ」の声が掛かるが、
普通では考えられない本日一組目のお客さんである自分。
「すいませぇ~ん」と声を出すまで、気付いて貰えなかった。
蕎麦と出汁、薬味の葱と本山葵がセットになった「おみやげ」を注文する。
約10分後、注文した「おみやげ」を受け取り、今度こそ堺ICに向かう。

阪和道では、雨が強くなったり、弱くなったり・・・クルコンをセットして、淡々と走る。
海南に近づいた頃、ナビから渋滞情報が告げられる。
「有田~広川間、緊急工事の為。通行止め」・・・ウゲェ~!
高速から42号線に降りた渋滞の列は、広川ICまで続き、更に白浜近くまで続いた。

現時点での高速の終点「南紀田辺IC」まで行ってしまう事も考えたが、
みなべの「築山」で、イカの一夜干しを買う為、みなべICで降りる。
この一夜干しも、父に教えてもらった名物。誰にあげても喜ばれる逸品。

遅くとも13時過ぎには到着の予定だったが、通行止め、渋滞、雨にビビッてる車のせいで、着いたのは14時半近かった。

手土産と喜寿のプレゼントを渡して、近況報告をする。
そして、四方山話が一段落した頃、父がしみじみと呟いた。
「お前と、こうして話をするなんて、あの頃には思いもしなかった。」
その言葉に、自分のした親不孝を反省し、只々、頷く事しか出来なかった。

そして時計が4時を過ぎた頃、空模様を見ながら、
「雨や渋滞、総雨量による通行止めが有るかもしれない。今日は、そろそろ帰ったほうが良いぞ。また、釣りの帰りでも寄ってくれたら良いから。」
せっかく来たんだから、もう少し話をしたかったが、父の言葉に従い帰路に着く事にした。

帰りがけに、北山村のじゃばら飴、みなべのカツオ梅、イノブタのお好み焼きを土産に貰った。

帰路は、打って変わって渋滞も無し、往路では激しく降った雨も上がり
岸和田辺りまで戻って来た時には、穏やかな日差しまで射してきた。

2時間程で、帰宅し電話で無事到着の報告をすると・・・
「たくさんの土産をありがとう。ちく満の蕎麦は、もう一生食べる事が無いだろうと思ってた。本当にありがとう。」
と言ってもらえた。
開店を待ってでも、買って行って良かった。
そう言って貰えて、嬉しかった。
帰路の日差しの様に、穏やかで、爽やかな気分になった。

さっそく、イノブタのお好み焼きを頂く。
イノブタの肉は、豚肉よりも味の濃い脂と、しっかりした肉質で美味しかった。

じゃばら  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%90%E3%83%A9

コメント

あさやん
2011年6月14日20:46

あぁ~・・・いい話聞かせてもらったわぁ(涙)
よかった よかった。

キカイダー
2011年6月16日22:15

いやぁ~、この歳になるまで親の”ありがたみ”が解ってなくて、お恥ずかしい次第で・・・
でも、この歳になって理解出来ただけ、マシかな?と自分では思ってます。